原田コラム

2010/02/25

Feb 2010 Antwerp 2

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

GIA Grading Report

○会社経営としてのLabo

昨年よりアントワープのマーケットにGIAのレポート(ドシエ含む)が氾濫しています。
ラウンド、ファンシーシェイプを問わず0.2カラットサイズのようなメレーサイズにまでレポートがついてきます。
お陰でブローカーもバイヤーも一苦労です。
かつては、1つのパーセルに何十個と入っていたので、ブローカーは背広の内側に収納できる程度の大きさのケースで十分でしたが、現在は1つ1つにレポートをつけて持ち歩かなくてはならなくなり、大きなアタッシュケースが必要です。
バイヤーもパーセルから大きな紙の上にザラっと空けて、何十個も一遍に検品するので作業が早く出来ました。
現在は、1つ1つをパーセル(タトウ紙)から出して行うので時間がかかり、量が多いとこの作業だけで腱鞘炎になりそうです。

今回は、1カラットサイズから2カラットサイズまでVSクオリティーを買ってみようと思い2日間で300~400個ほど集中的に見てみました。
結果は愕然とするものでした。
いつもの基準で買うことが出来るものが殆どありません。
クラリティーグレードは内包物の多寡の程度ですが、VS-SIクラスの基準が全く変わっていました。
若干乱暴ですが、一言で言うとグレードが一つずつ上がっています。
例えば、以前のSI1がVS2に、VS2がVS1に、という具合です。
甚だしいものは、SI1がVS1と2グレードの差が出ています。
VVSクラスはそれほどの変化が感じられなかったので、VSからSIクラスの幅が低いほうに向かって広くなっています。

私のダイヤモンドの買い付けの基本は、カラーはシェイプと大きさでターゲットが異なりますが、クラリティーグレードは出来るだけVSクラスを中心に欠点がなく特徴となるインクルージョンを選んで買っています。
もちろん透明度が高いことを確認したうえでの選択です。
今までもVS2という範囲は、欠点となる内包物が多いために50個に1つぐらいしか選ぶことが出来ませんでしたが、今回の変更ではVS1も含めて200個に1個ぐらいしか買うことが出来ません。

繰り返しお伝えしますが、「レポートは鵜呑みにしない」で下さい。
レポートでは「美しさ」は分かりません。
「欠点」なのか「特徴」なのかも本物のプロでなければ分かりません。
このような事実が分かれば、4Cを並べたインターネットのサイトで購入するような愚かな事は出来ないはずです。

蛇足ですが、GIAに確認しても変更の確認は出来ないでしょう。
GIAはインドのMumbaiで教育とレポート発行のサービスをスタートさせました。
2カラット未満は殆どMumbaiで行われているとも言われています。
人件費から考えると無理もありませんが、スタンダードの変更はブランドにキズがつきます。
競争相手のグレーディング範囲を眺めながら行うような商業主義はGIAには似合いません。