原田コラム

2008/09/05

宝石の産地による格

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

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宝石は、発見されて「流行」が起こって「習慣」になり「伝統」が出来ます。
「伝統」が出来るまでには、需要に見合ったある程度の産出が続くことが必要です。
毎年のように新しい産地の宝石が発見されますが、伝統になるような宝石になるまでは長い年月がかかります。

タンザニアで新しく発見されたルビーが話題になっていますが、価値が定まるまでには時間がかかります。
無処理で大粒のジェムクオリティの産出も報告されています。
全国宝石学協会さんやGRSの報告によるとインクルージョンやデータで産地の同定は可能なようなので、伝統あるビルマ産の無処理のルビーの価格に影響を与えることは当分の間無いでしょう。

このことは、マダガスカル産のサファイアの事例を考えれば分かりやすいと思います。
マダガスカル産サファイアは1980年代後半には産出が報告され1990年代から市場に出始めました。
驚くことにこの鉱山はビルマ産やカシミール産の特徴をもつ2つのタイプのサファイアを産出します。
中には、無処理のジェムクオリティのものも出回って、ビルマ産、カシミール産との鑑別が出来ず、当初業界は混乱しました。
しかしその後の研究によりほぼ産地を同定できるようになり、市場は静けさを取り戻しました。
現在、オークション等の還流市場では、無処理でジェムクオリティのサファイアの産地としては、カシミール、ビルマ、スリランカの順に人気があり、マダガスカルはまだ後塵を拝しています。
マダガスカル産のサファイアの中には、上位の産地に劣らない美しさをもったものもありますが、価格は届きません。
これが、産地の格です。

タンザニア産のルビーもマダガスカル産のサファイアと同じような位置づけでスタートすることと思います。