原田コラム

2008/05/13

ヒストリックリング②

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

合成ルビーリング

再び、世界的なリングのコレクターである橋本さんのヒストリックコレクションを手に取る機会に恵まれました。

コレクションの一つをご紹介します。

上のリングは、1905年頃の合成ルビーのリングです。
イエローゴールド、ホワイトゴールドで作られ、天然のダイヤモンドが留められています。

異常に細長いデザインがとてもユニークですが、「何故、合成ルビー?」と思われる方が殆どではないでしょうか。
橋本さんに確認したところ、この時代に合成ルビーが存在したことの証としてコレクションに入れたそうです。

当時、合成ルビーが市場に登場したときのエピソードを、同席したルビーに詳しい方が披露してくれましたので、ご紹介します。

当時、フランスとイギリスはビルマのモゴック鉱山の権利を巡って争っていました。
結果は、イギリスが手中に収めて、フランスは撤退を余儀なくされました。
その後、間もなくフランスでベルヌイがルビーの合成に成功しました。
当時は、鑑別法が確立しておらず、瞬く間に合成ルビーが市場を席巻しました。
天然のルビーは勝負にならず、最終的にイギリスはモゴック鉱山から手を引きました。
謀らずしもフランスは借りを返す結果になりました。

このリングが作られたのは正にその頃で、その証にこのリングは手の込んだ加工が施されています。
もし、価値がないと分かっていたら、費用のかかる加工をすることはなかったでしょう。
もちろん、その後鑑別法が確立して、合成ルビーは二束三文になったのは言うまでもありません。

この話は、加熱処理と無処理のルビー、サファイアの現状に重なります。
1970年頃に誕生した高温過熱処理のルビー、サファイアは、やはり鑑別法が確立しない間は大きな価値の差がなく取り扱われてきました。
1990年代に入ると徐々に鑑別が出来るようになり、現在では価値に大きな差がついています。
合成と処理と手法は異なりますが、問題の本質は同じです。
人は何度も同じようなことを繰り返す動物のようです。

合成ルビーリング クローズアップ

クローズアップすると合成ルビーのクラウン部分が平に研磨されてリングの上面のフラットな面とぴったり合っています。
このように段差が無い状態を状態を職人さんは「面一」(つらいち)と呼びます。

合成ルビーリング 裏から

裏は、このようになっています。