原田コラム

2007/11/16

ピジョンブラッドと蛍光性

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

3カラットサイズ ルビー ピジョンブラッド

ルビーはサファイアと同じコランダムと言う鉱物です。
主成分は、アルミニウムと酸素です。(酸化アルミニウム)
純粋なコランダムは無色ですが、クロムを含んで赤くなったものがルビーです。
クロムの量は、1%程度がルビーとしては最適とされています。
増えすぎるとグレーになり、宝石にはなりません。
一方、サファイアの青は鉄とチタンによってもたらされます。
正に、奇跡のような偶然が宝石を生みます。

ビルマ産のルビーは紫外線を当てると強い蛍光を発します。
これは、ルビーに含まれているクロムによります。
同じルビーでもタイ産のものは、蛍光性が少ないのは、鉄分のためです。
鉄分が多いと蛍光性を減少させます。

ルビーのピジョンブラッドとは、我々は以下のように定義しています。
①伝統的な概念なので、ビルマのモゴック鉱山産のもの
②無処理で透明度が高いこと
③濃い赤であること
④メインストンサイズの大粒であること

○何故ビルマ産なのでしょう。
□それは、伝統的であると言うこととに加えて強い蛍光を発することも理由の一つだと思います。
タイ産にも同じような濃い赤が存在します。
しかし、同じように見える2つの産地のルビーを部屋の中から昼間の窓辺に移動しながら見ますと、ビルマ産のルビーは見る見る内側からメラメラとした炎のような赤が湧き上がってきます。
一方、タイ産のものには変化が見られません。

○何故無処理なのでしょうか。
□稀少性は比べようが無いのは、当たり前ですが、高品質な無処理のルビーの透明度は加熱のもののを遥かに凌ぎます。
また優しさも加わるのが不思議です。
ビルマのモゴック鉱山のルビーの一部には加熱をしなくても美しいものがあります。
タイ産や同じビルマでもモンスー鉱山のものの殆どは加熱をしないと宝石になりません。
このことからもモゴック産であることが分かります。

○何故大粒なのでしょうか
□ピジョンブラッドは、想像以上に濃い赤です。
1カラット以下のような小さいサイズで濃い赤の場合は、真っ黒になり美しくありません。
このサイズでは、むしろ明るめな明度のルビーをお勧めします。
同じ濃い赤でも3カラットサイズ以上の場合は、光を多く取り込むので内側からモザイク模様が浮かび上がってきます。
これは、欧米でメインストン(主石)には3カラットサイズ以上が好まれることに関係があるように思います。
存在感が出て、見栄えがするサイズがこのくらいからなのでしょう。
メインストンサイズのルビーで赤が美しく見えたのが、ピジョンブラッドの概念だと思います。
それより小さいサイズは対象でなかったのだと思います。
因みに3カラットサイズとは、3カラットの宝石として十分な大きさ(場面)があることを差します。
深さが浅い場合は、2カラットでも3カラットサイズと言えます。