原田コラム

2007/11/05

アントワープ市況 ①

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

アントワープの市況について、3回に分けて報告します。
プロ向きにまとめた報告書をベースにしていますので、説明の足りないところはご容赦ください。

9月の香港ショーでの好調な結果を背景にアントワープの業者は、売り上げに不安を抱いていません。
但し、続いている原石高に加えてユーロ高と金利の上昇がコスト高になって売り上げ増による利益を相殺しているため表情に明るさはありません。
参考までに、ドル金利は銀行によりますが7~9%です。
その後、利下げがされていますが、いずれにしても低かったころに比べると上がっています。
もっとも金利としては常識の範囲です。

何よりもユーロ高が一番利益を圧迫しています。
宝石の取引はドルですが、費用はユーロです。
ドル対ユーロの為替レートの比率は、現在約1:1.45と過去最高の水準にあります。
2001年のユーロ安のころは1:0.85程度でしたので、ヨーロッパ経済の復活とともに毎年0.1程度上がり続けています。
ダイヤモンドの値上がりもこの差の範囲内は、為替レートによる調整と見ることが出来ます。
1カラット未満のサイズの原石の高騰は、上記のように需要よりもドル安がもたらしたものです。
しかし、大きなサイズは原石販売業者による入札制度によるもので、大きなサイズになればなるほど過熱している状態です。
1980年の投機による急激な高騰と下落を経験している業者は、取引から撤退しないまでも、在庫回転をより早めて、調整に備え始める人もいます。
但し、現在は世界的な二極分化による実需の様相が強く、急激な値下がりの可能性は少ないように思えます。