原田コラム

2007/04/13

Sawableからのハートシェイプ ダイヤモンド

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

残念ながら頭痛が治まらず、バーゼルショーはキャンセルしました。
世界中の友人と一度に会えるので楽しみにしていましたが、今後個別に訪問していきます。

Maccle

これは、ダイヤモンドの原石でMaccle(マクル)と呼ばれる三角形ををした双晶の原石です。

厚みがなく、インクルージョンが比較的多くVS以上のクラリティの出現率が低いのが特徴です。また糸くずのような細い白いインクルージョンが外から内側に伸びているものが良く見られます。

サイズの小さいハートシェイプやトリリアントシェイプのダイヤモンドは、通常この原石から研磨されます。
結果として、ハートやトリリアントは厚みがなくフラットなものが主流となっています。サイズが小さいダイヤモンドで十分な厚みがないと、透けてしまってモザイク模様がはっきりせず、魅力に欠けます。

世界の研磨業者の中には、十分な厚みをもった輝きの強いハートシェイプを作っているところがあります。
Maccleを使わずに下の写真のようなSawableを使います。
Sawableは、主にラウンドブリリアントカットに研磨されますので、価格も殆ど同じような価格になります。
ハートシェイプの価格は、ラウンドに比べて割安なのが一般的です。

Crystal

Heart from sawable and maccle

左は、sawableから研磨されたハートシェイプです。メリハリの効いたモザイク模様と満遍なく強い輝きがあります。
それに引き換え右は、モザイクがはっきりせず、全体にぼやけています。特に中心のキュレットから全体に伸びるパビリオンのモザイクを比べると一目瞭然です。
実際に肉眼で見ると輝きの違いは、写真の比ではありません。

Heart depth

逆さにしてみると厚みの違いが良く分かります。
また、Maccleから研磨したものはガードルが厚いのものが多いのも特徴です。

Sawable heart Maccle heart and trilliantHeart & Trilliant

トリリアントも比較しておきましょう。
このトリリアントは、同じMaccleからのハートよりも更にフラットなので、輝きも弱くなっているのが分かります。

宝石で深さは、重要な要素です。
ただし、適切な深さは、大きさ(サイズ)によっても異なります。
小粒では、適当と思われる深さも大粒では、全体のバランスで違ってきますのでマニュアルの鵜呑みは禁物です。

フラットなハートやトリリアントも深さを抑えたいメインストンの脇石には重宝なケースがあります。
バランスの良い装身具に仕立てることを考えて素材選びをします。