原田コラム

2016/02/23

Diamonnd Pipeline 2014 (3)

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。
国別研磨済み生産金額

この表は国別の研磨済み生産金額です。
平たく言うとどこの国で幾らぐらいダイヤモンドが研磨されているのかと言うことです。
ご覧の通り半分以上がインドです。
ここでは金額の比較のみですが、重量ベースは90%以上がインド研磨です。
サイズが小さくなればなるほどインド研磨の割合が増えます。
De Beersのコントロールが機能していた頃は金額ベースでインド、イスラエル、ベルギーが3割ずつで残り1割をその他の研磨地と言うのが長く続いていましたが、現在はインドの1強とその他となっています。
インドの研磨工は盛時で100万人と言われていましたので圧倒的です。
研磨の品質も以前はインド物と称して悪いカットの代名詞となっていましたが、現在は技術的な差は殆どありません。
むしろ、最新の研磨機の導入はインドが最も積極的です。
サイズも私が初めて買い付けに行った30年前は一番大きなサイズで0.10ct(直径3ミリ)程度でしたが、現在はどんなサイズも形も研磨しています。
一般的な消費者が見るダイヤモンドは殆どインド研磨だと思って間違えありません。
中国が2位にあがっていますが多くがベルギーやイスラエル等の研磨業者の工場なので、オーナーの国経由で輸出されます。
ベルギーは特別に完成度が高いものや、大粒で特別高価な原石等の付加価値の高いものが得意です。
イスラエルは伝統的にファンシーシェイプが得意ですが、現在は中粒以上の大きなものに限定されています。
米国はニューヨークです。
De Beers独占時代に工賃の割合の少ない大粒石をニューヨークの業者に割り振っていた名残ですが、GIA New Yorkの存在抜きでは語ることが出来ません。
GIAは米国以外でもラボを展開していますが、今でも4カラット以上とファンシーカラーはニューヨークでのみグレーディングしています。
ファンシーカラーは同一のマスターストンが出来ないことと大きなサイズは1グレードで大きく価値がことなるのでばらつきをなくすことが目的です。
ニューヨークの研磨業がなくならないのは地の利も大きく関係しています。
バイヤーはインド以外ではアントワープ、テルアビブ、ドバイ、香港、ニューヨークと言った集荷地で買い付けをしますが、どちらで買っても殆どの小粒サイズはインド研磨のものです。
インド以外のダイヤモンドの研磨地の変遷は安い工賃を求めての歴史です。
タイに始まりスリランカ、ソビエト崩壊直後のロシア、中国、ラオス、ベトナム等と場所を変えてきましたが一時的に工賃の最安値を記録しても結局インドの工賃に対抗できないので、研磨地として残ったとしても付加価値の高いものに限定されています。
最近はボツワナ等でも研磨が盛んですが、これは地元政府との契約で原石を購入するにはに研磨工場の経営が条件となっているためです。
地元としては産業の振興と雇用の確保が狙いです。
以前のように採掘権だけではすまなくなっています。
でも実際には見合っていない工場が殆どのようです。

Diamonnd Pipeline 2014 (4)に続く。