原田コラム

2013/12/31

合成ダイヤモンド混入の現状と市場に与える影響(下)

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

合成がNEAR GEMのマーケットを奪う
では合成ダイヤモンドが多く流通することで何が変わるのか。
キーを握るのは低単価ジュエリーになりそうだ。
NEAR GEM QUALITY(低品質)の天然メレーダイヤモンドは主に低単価のジュエリーに使われている。
他の合成宝石が辿って来た様に合成設備の大規模化で生じるコストダウンで合成ダイヤモンドの価格は下がり続けるであろう。
ある段階で輝きの劣るNEAR GEM QUALITYの天然ダイヤモンドが輝きの良い合成ダイヤモンドに取って代わられることは想像に難しくない。
現在、価格帯によってはキュービックジルコニアやクリスタルガラスが使われていることから考えてもハードルは高くない。

そうした事態が起こるとNEAR GEM QUALITYの天然ダイヤモンドは行き場を失う。
新たな使い方が見つからなかったら工業用と一緒にされて売られるしかない。
インドに研磨産業が起こったことでそれまで研磨されなかったNEAR GEM QUALITYが大衆ジュエリー向けに研磨されるようになったが、皮肉なことに合成ダイヤモンドの登場で以前の状態に戻ることも考えられる。
ルビー、サファイアの加熱の有無が判断できるようになったことで、無処理のGEM QUALITY(宝石品質)が処理のない時代と同様の評価がされるようになったことの因果関係と無縁でない。

ダイヤモンド鉱山の採掘費用は変わらないのでNEAR GEM QUALITYの価値の低下はGEM QUALITYのダイヤモンド価格を押し上げるか、それが出来なければ閉山せざるを得まい。
合成ダイヤモンドがもたらすのは混乱によるマーケットの崩壊ではなくダイヤモンド価格の変動である。
天然でも美しくないものは価格が下がり美しいものは値上がりする当たり前の状況をもたらすのが合成の登場だとしたら、むしろ歓迎したいと言ったら言い過ぎか。

以上、賛否を承知で個人的な推測を展開したが、これからの議論の一助になれば光栄である。

(リ・ジュエリービジネスレポート10号より)