原田コラム

2013/09/25

CVD合成ダイヤモンド

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

CVD合成ダイヤモンド

合成ダイヤモンドの記事で触れたCVD合成ダイヤモンドを入手しました。
この画像を見てCVD合成ダイヤモンドと分かる方は殆どいないと思います。
まるでプラスチックの破片のようです。
研磨済みは合成ダイヤモンドの販売サイトで購入できますが、研磨前の素材はなかなか手に入りません。
そこでメーカーにサンプルを注文しました。
出来上がったのがこれです。
サイズは縦横4.5ミリ、高さ2.5ミリ、重さ約1カラットの単結晶です。
頼んだメーカーが半導体基盤や工具向けだったので最大の厚みが2.5ミリまでなので、予算から逆算して4.5ミリ四方になりました。
ご参考までに価格は10万円です。
色は黒みがかった茶色で透明です。
うろこ模様の上面が成長面です。
底面は種結晶についていた面で真平らのつるつるです。
このメーカーは種結晶と成長した合成ダイヤモンドを綺麗に剥がす技術を確立していて種結晶自体は何度でも再利用が可能とのことです。
側面はレーザーで4.5ミリ角に切り落とされています。
向かって右の側面に縦の筋が確認できるのがレーザーで切った跡です。
残念ながら側面に関しては成長したままの姿は分かりません。
向かって左の側面には横縞の模様に見えます。
これは、CVDダイヤモンドが層状(パイ生地状)に成長した跡です。
この装置での成長は1時間当たり10ミクロンと聞いていますので、この厚みになるには250時間程度かかったと推測されます。
CVDダイヤモンドは真空状態で成長させるので窒素が殆ど入っていないTypeⅡaになりますが、極微量の窒素を入れることによって成長が早くなります。
成長速度が速いためダイヤモンド構造になりきれなかった炭素により色が濃くなります。
因みにこの原石から研磨しても0.25カラットサイズのラウンドブリリアントカットしか出来ませんので宝石用としては採算は取れません。
海外では、宝石用に厚みのある合成ダイヤモンドも作られていて、最大2カラットサイズの研磨済みが確認されています。
恐らく、何年後かには現在の価格が信じられないほどの安値で作られていると思います。

HPHT合成ダイヤモンド

この画像は高温高圧法で作られた合成ダイヤモンドです。
窒素が入っているTypeⅠの中でも窒素が単独で存在してる原始的なタイプにのTypeⅠbになりますので、鮮やかな黄色が特徴です。
八面体と六面体が合わさった結晶で出来上がりますので、CVD合成ダイヤモンドより自然界の結晶に近く思えますがほぼ同じ形状で出来上がりますので人工製造物であることが分かります。
自然界の結晶は下記の画像のように一つ一つが異なりますので一目で分かります。

Diamond Rough

天然ダイヤモンド、高温高圧合成ダイヤモンド、CVD合成ダイヤモンドを並べてみました。
参考のためにスケールもつけました。
見比べてみてください。
天然のダイヤモンドが愛おしく感じられると思います。

原石サイズ比較