原田コラム

2013/08/29

GIA Tokyoがもたらす国際化 (2)

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

GIA Tokyoの主なサービス

○ダイヤモンドグレーディング
・Diamnd Grading Report(ダイヤモンド グレーディングレポート)
3カラット未満は東京支店で作成
3カラット以上受付のみ。作業はニューヨーク。
プロット付き報告書

・Diamond Dossier(ダイヤモンド ドシエ)
2カラット未満限定簡易レポート。東京支店で作成。
プロットが無い代わりにガードルにレポート番号レーザー刻印
日本で流通しているダイヤモンドレポートの内容に近いもの。

○カラーダイヤモンドレポート
Colored Diamond Report
ファンシーカラーのダイヤモンドレポート
東京支店は受付のみ。作業はニューヨーク。

GIAのサービスで圧倒的に使われているのはこのダイヤモンドサービスです。
しかしGIA Tokyoにおいてのレポートの大量依頼は望めないかも知れません。
流通の要所であるムンバイ、香港、バンコク、ニューヨークには既にGIAがあるので必要なダイヤモンドは現地で作成されているからです。
重要な集荷地であるアントワープには支店はありませんが、受付会社があり毎日のように出入荷があります。
日本でのレポート需要は既に日本のレポートがついている流通在庫や還流品の取り直しがメインになるかも知れません。

○鑑別レポート
・鑑別と処理の有無と程度の判定
・ルビー、サファイア、エメラルド、トルマリンの原産地判定
東京支店で作成
(現在は訓練期間中のためバンコク支店で作業。来年からの本格稼動を予定)

○品質保証レポート
依頼された情報についてのみ詳細が記載される。
10個までをは同一料金。
例)ルビー、サファイアの加熱の有無。エメラルドの含侵の有無と程度。
個別のレポートを作成する前の選別に便利。
東京支店で作成
(現在は訓練期間中のためバンコク支店で作業。来年からの本格稼動を予定)

私はGIAの鑑別サービスが日本では重要になると見ています。
現在日本では世界標準の鑑別レポートを作成しているラボはありません。
もっとも殆どのレポートは日本語表記のみなので通用するはずもありません。
決定的な違いは情報に関する基本姿勢です。
欧米の主なラボは鑑別の白黒をはっきりさせようとします。

例えば、日本のラボでルビーの鑑別レポートを作成すると。
個別の結果は問わず「通常、色の改善を目的とした加熱が行われています」の記載となります。

GIAのレポートでは以下のような表記になります。
Indications of heating with residues in fissures.
(加熱の痕跡と亀裂に残留物を認める)
又はNoindication of heatingになります。
(加熱の痕跡無し)
*残留物とは加熱の際に保護のために使うborax(硼砂)が融けてガラス状になり亀裂に残ったもの
加熱処理されたものの多くにはこの残留物が残るのでこの記述がされるものが多くなります。
更に要望があれば、原産地の同定もされます。

エメラルドの場合も日本のラボでは「通常、透明度の改善を目的とした無色透明材の含浸が行われています。」になりますが、
GIAでは「含侵の痕跡を認める」の表記になります。
含侵の程度も「僅かな」、「中程度の」、「著しい」に分けられます。
勿論、無処理の場合は「含侵の痕跡無し」と判定されます。

○鑑別レポート
起源(天然、養殖及び有核・無核の判別)
母貝(判定可能な場合)
環境(海水、淡水)
検出可能な改変処理の有無

パールサービスもカラーストンの鑑別レポートと同じです。
上記の項目で判断が可能な物は全て記載されます。
但し、ハナダマであるか否かのような表記はありません。

続く。