原田コラム

2012/04/18

Christie’s New York Auction Result 1

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

昨日Christie’s New Yorkのオークションが行われました。
結果は、総額で$70,726,650(手数料込み)約58億円、落札率95%(ロット数)でした。
ハイライトはHuguette Clarkコレクションです。
コレクションの紹介の前に彼女について簡単にまとめてみました。

《Huguette M.Clark》
Ms. Huguette M. Clark

19世紀の終わりの米国で当時Rockefellerに次ぐ資産家として有名だった、William Clarkの資産を引き継いだ娘、Hugette Clarkが昨年亡くなりました。
享年104歳。
その人生は秘密のベールに包まれています。
莫大な財産を引き継ぎながら75年以上の間、人目を憚ってひっそりと孤独に暮らしていました。
その隠遁生活ぶりは身の回りの世話をする者ですら、何十年もその姿をほとんど見たことがないほどでした。
今回オークションにかかる宝石は、殆どが1940年代から金庫に入れられたままになっていたものです。

コレクションの中から高額の3点を以下に紹介します。

○Fancy Vivid Pink Diamond Ring by Dreicer
Lot.304 9.00cts Fancy Vivid Purplish Pink SI1

Shape: Cushion-shape
Weight:9.00cts
Color: Fancy Vivid Pink
Clarity: SI1
Type: TypeⅡa
見積価格:$6,000,000-8,000,000
落札価格(手数料込み):$15,762,500(約12億9,000万円)
1カラット当たり価格:$1,751,000(約1億3,600万円)
落札者:Brett Stettner (Stettner Investment Diamonds)

正にオールドカットのピンクダイヤモンドです。
カットと大粒のピンクであることからムガール帝国のマハラジャが所有していたのではと想いをめぐらせてしまいます。
レポートのプロットを見るとガードル周りにたくさんのチップがあることから、長い間身に着けられてきたことが分かります。
Lot.304 9.00cts Fancy Vivid Purplish Pink SI1 Prot

Dreicer製 1910年頃
最近の大粒Vivid Pinkの1カラット当たりの落札価格は百万ドルを超えることが当たり前になってきましたが、今回は2百万ドルに近いところまで伸びました。
この相場、いつまで続くのでしょうか。

○Diamond Ring
Lot.305 44.09cts D IF TypeⅡa EX EX

Shape: Octagon-shape
Cut: Step-cut
Weight:44.09cts
Color: D
Clarity: IF
Polish: EX
Symmetry: EX
Type: TypeⅡa
見積価格:非公開
落札価格(手数料込み):$7,474,500(約6億1,300万円)
1カラット当たり価格:$169,500(約1,400万円)
落札者:業者

1940年代から金庫に眠っていたことから考えると、オークションの前に再研磨されてClarity、Polish 、Symmetryが向上したのでしょう。
縦横が23.84×19.62なので大雑把に言えば2センチ角ぐらい、大きな指でもすっぽり隠れるサイズです。
トータルデプスは50.5%と私にとっては理想的です。
それでも深さは9.91mmあります。
2センチ角で深さが1センチの立体をご想像下さい。
すごい迫力ですね。

○Diamond Ring by Cartier
Lot.293 19.86cts D VVS2 Pot.IF

Shape: Octagon-shape
Cut: Step-cut
Weight:19.86cts
Color: D
Clarity: VVS2(potintially IF)
Type: TypeⅡa
見積価格:$2,000,000-3,000,000
落札価格(手数料込み):$3,106,500(約2億5,500万円)
1カラット当たり価格:$156,400(約1,300万円)
落札者:非公開

この手の石目方を見ると、もともと20カラットに届かなかったのか、あるいはオリジナルは20カラットあったのが細かなキズを取ったので20カラットを割ってしまったのか、どちらだろうと想像してしまいます。
Clarkコレクションのジュエリーは1940年代から金庫に保管されたままと言われています。
それが本当なら、GIAの4Cシステムが確立したのが1950年代ですから、IFに拘っていないとすればオリジナルの石目方なのでしょうか。
石目方ひとつとっても考え始めると楽しいものです。

続く。