原田コラム

2010/12/08

50年前の指輪

〜ジュエリーコンシェルジュ原田の宝石コラム〜
宝石の価値判定の最前線で働いてきたジュエリーコンシェルジュ原田が
世界のジュエリー業界の動向についてご紹介いたします。

 

50年前の指輪セット

一般に立爪リングと呼ばれているダイヤモンドソリテールリングにも流行がある。
最近は背が低く爪が小さいものになっているが、30年前は背も高く四角く張り出した爪で、更にその前は最近のものより華奢で手作りのため何処か温かみがある。
日本のものは見ればおおよその時代が分かる。

最近、年配のご婦人が1本のソリテールリングを評価で持ち込まれた。
1カラットサイズのダイヤモンドが留められた洗練されたリングだ。
ダイヤモンドは無色で透明度が高く、欠点も見当たらない立派なジェムクオリティーだ。
しっかりした4本の爪を絞り込み、側面を平らに仕上げることでスタッカブル(重ね着け可能)になっている。
肩をラクダのコブの様に盛り上げるという全体の高さを感じさせない工夫もある。
セットで持参された小粒のラウンドダイヤモンドが4個留められた一文字タイプの指輪とぴったりと重なる。
こちらのリングも光を十分に取り込むようダイヤモンドが宙に浮いたようにセッティングされて良く輝く.

驚いたことに2本の指輪は、亡くなられたご主人が50年前、婚約指輪と結婚指輪としてご婦人に贈ったものだった。
ご主人は国際線のパイロットで、ベルギーで購入されたのだそうだ。
良く見ると地金はイリジウム10%のプラチナ900と言う硬く耐久性が高いものが使われている。
恐らく、このサイズ以下のダイヤモンドのソリテールリングはお店になかったと思われるが、選ばれたサイズがポイントだ。
もし、同じ時期に日本で0.3や0.5カラットサイズの立爪リングを購入されていたら、今は作り替えを勧められるのが落ちであろう。
50年前の指輪が今でも立派に通用する当時のヨーロッパの宝飾文化のレベルの高さに恐れ入った。
ジュエリーは適切なスタイルの構想の良いものを選べば時代が変わっても使うことが出来るという良い例だ。

50年前と言えば1ドルが360円の固定レートの頃なので、相当の大枚をはたいたことは容易に想像できる。
金額もさることながら、考え抜いて選ばれたであろう亡くなったご主人の慧眼に敬服する。
一番大切なのは、指輪にこもったご主人の愛情だ。
常に身に着けることの出来る指輪は「愛を伝える」ものとして相応しい。
こんな買い物が出来るようになりたい。